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まほろば自然農園
 
   

     
     まほろば農園では、今頃になると、山や畑の雪が融け始め、雪融け水を上手に逃がす為に大わらわです。

畑の上にさらに山林があり、林の中は日当たりが悪いので、なかなか雪が融けず、その下の畑もいつまでも乾かず、なかなか種まきが出来ません。

 でも、林の下の落ち葉や腐植が一杯堆積し、その中に棲息する無数の微生物や栄養分も一緒に畑の方まで運んでくれるので、わざわざ土着菌(註)を培養しなくても、良いのです。

 大切な事は、流れてきた土着菌が死なないように、適湿を保ち、腐植(緑肥や堆肥など微生物のエサ)の多い土作りをする事です。

 後は、必要最低限の作物ごとの個性に応じたPH(酸アルカリ度)や、水分や栄養分の調整で微生物の菌叢バランスを整えていきます。




 


     そう見て来ると、今まで傾斜がきついだとか、粘土質で土質が劣るだとか、風が強いだとか、日当たりが悪いだとか、不満ばかり言って申し訳ない事でした。

 よくよく考えてみると、自分の無能力を棚に上げて、上手に作れなかった時の言い訳にしてきたように思います。
 今年から心を入れ替えて、まほろば農園の立地に相応しい農業のあり方を一から組み立て直して行きたいと思います。

 




   
 
 
   

 微生物は、どんなに多量に多種類投入しようとも、そこに微生物のエサがなければ、棲み続けることは出来ないし、増殖する事も出来ません。
同じエサでも、特定の微生物が大好きなエサがあれば、爆発的に増殖する事もあります。


 逆に、直射日光の当たらないところで、エサと適当な水分があれば、自然発生的にそのエサが大好きな微生物が、何処からともなく湧いてくるように発生するものです。


 生命の自然発生説は最初、アリストテレスによって提唱され、その後、パスツールによって完全に否定されました。
目に見えなくても、微生物は空気中にも土の中にも無限にいるからです。




 
   

 

 また、最近では、生命の最小単位である最初の微生物は、神様が作ったわけでもなく、ビッグバンから順々にエネルギー変換しながら、物質化し、生命現象を生み出したことになっているようです。

 でもそのような宇宙のシステムを作ったのは、やはり神様しかいないようです。
一方で、この世の現象は、すべて、人の意識が作り出したもので、夢まぼろしの如しともいわれています(般若心経)。

 ここまで来ると、人の意識が神様を作ったのか、神様が人の意識を作ったのか、分からなくなってしまいます。
 ちょっと農業から離れすぎてしまいました。





   

 
   


 とにかく、微生物は、他所からもってきたり、悪い菌を農薬で殺したりしなくても、適度な水分と、エサと、空気層があり、土に直射日光が当たらなければ、作物に必要な微生物は自然に増殖して、野菜は健康に育つ、と言うことが言いたいのです。

〈適地適作〉という言葉があるように、必要な環境条件の整った〈場〉があれば、その〈場〉にあった微生物がいつの間にか増殖してくるのです。

 それはあたかも〈自然発生したかのごとく〉、〈無から有が生じたかの如く〉にです。




 

 

 
     自然農法も有機農法も、この〈場〉を如何に作るかと言うことでは一致していますが、この〈場〉を作る為の手法が若干違うのです。

 自然が如何にして作物を作るかと言う原理は同じなので、自然農法は、その原理を研究し、出来るだけ人為を介さないで、自然の法則に則って作物を作ります。

 そこから、
〈適地適作〉・〈無農薬〉・〈無施肥〉・〈不耕起〉・〈無除草〉という手法が生まれてくるのです。

 
   
 


 
 有機農法は、自然の法則に則って作物を作るという点では自然農法と変わらないのですが、もう少し踏み込んで、少し人為を加えます。

 作物にとって理想的な〈場〉を作る為に、堆肥や有機質肥料を入れたり、耕したり、除草したり、しなかったりもするのです。自然と言う事の捉え方が少し違うのです。

 自然農法や有機農法にも色んな人がいて、色んな考え方があるので、本当は境界線など引けないように思います。

 あるいは、農薬や化学肥料を使わない事が有機農法と考えられ、有機JAS法もそこに基準を置いていますが、考え方が慣行農法に近い有機農法もあるようです。

 さしずめ、まほろば農園は何農法でしょうか?慣行農法でない事は確かですが、自然農法とも有機農法とも言えません。
 

 
   

 
   

 

 

 

 
 ハウスは、北海道でもトマトやナスやピーマンのような果菜類が作れたり、夏でも冬でも青菜類が作れたりするように、水や温度や紫外線をコントロールして〈適地適作〉の幅を人為的に広げるものですが、自然農法でも、有機農法でも、慣行農法でも、まほろばでも採用しています。

 栽培しようとする作物に相応しい環境を人為的に作り出しているわけです。

 それによって、季節ごとに作れる作物の幅と種類が格段に増えました。これって、慣行農法的な考え方でもありますが・・・・・。



 
   

 
     在来の固定種が自然だという考え方もありますが、固定種の自家採種と言うのは、分かりやすく言うと、近親交配のことで、それを長年続けていくと、だんだん生命力が低下(自殖弱勢と言うらしい)して、悪い性質や病気が出やすくなってきます。

 従って、適度に他家受粉させて雑種強制をはかることが重要になってきます。

 もともと、寒い北海道では米は作れませんでした。それが、品種改良によって交配し、固定化することによって、寒冷耐性のある美味しくて優秀な品種(「ゆきひかり」「きらら397」「ななつぼし」「おぼろづき」「ゆめぴりか」等)が作られるようになりました。

あまり、F1種が悪で、固定種が善という風に区分けし過ぎるのもどんなものかなと思います。
 
   
 
   

 F1種というのは、雑種強勢の原理を応用し、目的意識的に必要な形質を発現させたものです。

原理的には近親交配より良いと思いますが、目的意識に問題があると思います。

 慣行農法では、多肥多収(肥料をしっかりあげて、姿・形の立派な野菜を多くとる事)・効率化が目的なので、多肥・密殖に耐え、着果率が高く、収穫しやすく、成長期間が短く、季節を選ばず作付け出来、耐病性があり、矮性(背の低いトウモロコシとか)で、作り易い性質などを追求して来ました。

 しかし、F1種は、雑種強勢という生命の根本原理に則っていることと、日本の種苗会社は、その手法が主として自然交配なので、選択すれば、固定種より良いものも多いのです。

 
   


 
   

 まほろばでは、優秀なF1種を選んで固定種にしたり、固定種と交配させたりしています。

 化学的に厳密にやっているわけではなく、また、交配させるつもりではないのに交配してしまったという事もあり、雑種強勢の極みのようなまほろばオリジナルも時々生まれて来たりしています。

 まほろば農法のコンセプトは、生命力なので、お客様に置かれましても、オリジナルを楽しんで戴ければ嬉しく、あり難いかなと思います。

 
   

 
     品種改良が、ただ単に反収を上げ、姿・形の立派な野菜を作ることだけを目的とせず、生命力が強く、栄養バランスの良い、美味しくて、安全で、耐寒性のある野菜を作る事にあるのであれば、F1種は、決して悪い事ではありません。


 
   


 
     これは、コバルト60のガンマ線照射によって、人為的に作物の突然変異を誘発し、品種改良するやり方で、自然交配よりも時間と労力を省き、より早く、より優れた(?)ものを見つけ出す事が出来ます。

放射線照射と言えば、ジャガイモの発芽を抑える事で有名ですが、私たちのあまり知らない所で、品種改良の分野にも普及しているようです。
 
これは放射線工学という分野で扱われます。



 最近の研究では、放射線育種場(茨城県)と日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所の共同研究により、菊の培養外植片にイオンビーム照射し、花色変異系統を多数作出すことに成功しているそうです。


 
   


 
     これは、目的の特性を発現する遺伝子を、微生物や金属粒子や電気ショックを利用して人為的に作物の遺伝子に組み込んで品種改良を行うものです。

自然交配よりも時間と労力を省き、目的とする品種を作り出すという点において、放射線照射と同じ手法といえるでしょう。

このように遺伝子工学という分野で、生命が工学的に扱われる時代になりました。


 
   


 
     人為を極めるとはこういう事を言うのでしょうか。

植物工場は、自然が如何にして作物を作るかと言う原理を科学的に研究し、土も太陽もない滅菌された工場の中で、人工光線と化学合成された液肥で、ストレスもなく理想的(?)に育てられます。

 自然界と断絶し、作物を育てる為に、必要最低限の条件だけを選択し、ムダな物や、害になる物すべてを省いて、効率的にオートメーション化した工場の中で育てられます。

 人為を極める事によって、人の手のまったく必要のない野菜を作るのです。
これは、農業ではなく工業です。


 
   


 
     以上、時と所と手段をを選ばず、作物の品種改良はどんどん進んで来ましたが、ここに来て私たちはもう一度<生命の原点>に立ち返り、自然とは何か、という事を真剣に考えて見る必要があるように思います。
自然にはムダと思えることが山のようにあります。

 自然の中では作物の成長にとって暑すぎたり、寒すぎたりする不規則な気候の変化や、肥料や水分の過不足等‥は、大きなストレスをもたらし、作物の成長を遅れさせますが、環境適応能力(生命力)のあるがっちりとした作物を育ててくれます。

 この目に見えない生命力を無視した農業は、農業とは言えないと思います。




 
   


 
     もし、厳密に〈適地適作〉を徹底的に追求するなら、人が種を播かなくても日本の国土に自然に生えていた野草や、山菜だけしか食べるものがなくなってしまいます。

 特定の地域に相応しい特定の野草が生えているという事が一番自然なことだからです。

 また、日本で栽培されているほとんどの野菜は外来種なので、これも自然ではない事になります。
自然に生えたものだけを食べ、自分の力で取った動物や魚だけを食べて生活するのが一番自然という事になります。

 そこまで追求すると、人類は、狩猟採集の時代に戻らなければならないことになります。

その時代が一番平和でしあわせだったという人もありますが、人口の増えた今、そんな事をしたら、食料の争奪合戦になります。

今でも食糧自給率が低いのにです。
それでは何処まで自然に戻ればいいのでしょうか?




 
   


 
     また、在来種・固定種と言えども、長い歴史の中で、突然変異や、人為よって、人類が食するのに都合が良いように選択淘汰、改良されて、野草から野菜になったものです。
 
 もっと言えば、農業そのものが、栽培するという行為そのものが人為的なものです。


 
   


 
     福岡雅信先生の『無』の哲学に基づいた自然農法というのは、自然を開墾して(破壊して)農地を作り、田の為に潅漑設備を設けて、種を播くという段階で、もう既に『無』ではありません。

 農業自体が既に人為的なものだとすると、自然農法が自然で、有機農法が人為とも言えません。

出来るだけ自然を破壊しない農法という言葉で括った方がよいようです。


 
   


 
     理想的な農業は、それが、自然を守り、生態系を守り、人の命と健康を守り、未来永劫、永続的に続くことが大切です。

 そのような観点からすれば、放射線照射や、遺伝子組み換えや、植物工場や農薬や化学肥料は、当てはまらないのはもちろんですが、自然農法や有機農法も本当に永続可能な農業なのかという疑問もあるのです。


 
   


 
     人類を生態系のエネルギー循環の一環としてみた時、私たちは、私たち自身の食物残渣や排泄物を自然に帰していないように思います。

生ゴミリサイクルの堆肥化は、まだごく一部ですし、排泄物は、水洗トイレで海に流され、水洗トイレがない所は、業者による汲み取りが義務付けられて、堆肥として畑や田んぼに戻る事はありません。
自然から収奪するだけは収奪して、私たちは生態系の一員としての責任を果たしていないのです。

 自然の動物も植物も、排泄物や死体はすべて土に返し、生態系の一員としての義務をしっかりと果たしているのに、人間だけが秩序を壊しているのです。



 私が子供の頃は、生ゴミは土に返し、下肥は貴重な肥料でした。(農業とあまり関係ないけど、死んだ人も土葬でした)江戸時代には、下肥は、農産物と物々交換出来たそうです。

これこそが真の自然農法であり、有機農法ではないでしょうか?
永続可能な農業というのは、そういう事ではないかと思うのです。
どんなに自然農法や有機農法を懸命にやろうとも、大きな循環の流れの中で見た時、農地は少しずつ痩せていくように思うのです。


 
   


 
   

 もちろん、これらの事は、個人の農家やまほろば農園だけではなかなか難しいことです。
規制緩和や、お金のかかる国家的事業になると思います。でも、地域的に特区を設けてやってみるという事は出来ると思います。生ゴミや排泄物が肥料になるという事になれば、もっと食の安全にも気を配る事にもなってきます。

今の農政は莫大な補助金で成り立っていますが、根本的に農業を立て直すには、その場限りのお金ではなく、システムの根本的な改革が必要と思います。
100年の大計が求められているのです。



 
   


 
   

 今回は何か堅苦しい事をいっぱい書いてしまいました。
農園はまだ報告する事があまりなかったので、ついつい堅苦しい事が長くなってしまいました。
ここまで読んで下さって有難うございました。
来月からは現場情報満載で、青菜類の出荷もできそうです。


 
   


 
     これからそろそろ忙しくなってくるので、移植や定植の集中的に人手の欲しい時にお手伝いして下さる方を募集したいと思います。
曜日と時間帯は、ご都合の良い時にお願いしたいと思います。

まほろば本店事務局 
050−5526−9663までご連絡下さい。


 
       

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