『農民は地域の差異にかかわらず、狩猟採集民と比較して、臼歯の咬合面の凸凹がはっきりしている。 狩猟採集民は、どれも均等に歯が平らにすり減る傾向がある』
また
『西欧人は食物に混入した異物をすべて取り除いて食べているので、歯のすり減りはとても遅い』
とも言っています。つまり、西欧人は肉を食べるから歯が鋭いのではなく、消化の良いものを食べてきたから歯がすり減ってないだけだと言うことなのです。
しかも、
『肉食中心の欧米人の場合、歯は28本しか生えない場合が多い』
と書かれている事についても、現代人のように消化の良いものばかり食べている為の退化現象だと考えた方が正しいように思います。実際にも現代人は親知らずが生えなかったり、生えても正しく生えない人が増えているわけですから。
さらに、
『32本中の4本が犬歯で、これが肉食向きの歯です』
と言っています。しかし、32本中の4本と言うのは、12.5パーセントにあたります。歯の構造どおりに食べたとしても、一日3回、一食について12.5パーセントも肉を食べている人のことを誰も穀菜食とは言わないと思います。犬歯4本だけでも、人類は本来十分雑食動物ではないでしょうか。それに、犬歯がなくても食べられる柔らかい卵や魚、乳製品もあります。
また、
〈肉食動物と人を比較して、その歯の形状の違いから、人は穀菜食をするよう
に出来ている〉
と言う論もあります。一度は“なるほど”とは思ったものの、私は素朴にありのままに考えたものです。
なぜ狼やライオンの歯は鋭いのでしょうか?それは道具を持たない動物が食を得る為に、獲物を噛み殺したり、肉や皮を引き裂いたりする為です。そして、実際に食べる時には、動物は人のようにゆっくり噛む事はなく、まるで呑み込むように食べています。生存競争の厳しいジャングルでは、いつ横取りされるか分からないからです。また、生肉は引き裂くのがやっとで、噛み砕くことはできません。だから、鋭い歯以外は必要でないし、すり減って臼状にもならないのです。