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まほろばだより−健康コラム−


 毎回天食シリーズ読んでいただき、ありがとうございます。先日、あるお客様から、歯の形状について  「食物を生でたべるか、煮て食べるかでも違いがあるのではないでしょうか?」 というご質問をいただきました。同じように考えておられる方もあるかも知れませんので、紙面でお答えすることに致しました。  

太古の人々が火をどのように使用していたのかの情報は多くありませんが、180万年前とも、150万年前とも推測されています。はっきりと証拠があるのは、79万年前にアフリカで生まれたホモ・エレクトという原人からでした(ちなみに、現代人の直接の祖先と言われているホモ・サピエンスは60万年前)。


とはいっても、今のような形で調理されていたわけではなく、80パーセント位は生で食べられていたのではないかと人類学者は推測しています。



 食物は一般的に生のものほど堅くて消化しにくいわけで、狩猟採集民の方が農耕民より生の比率が高く、その意味でも歯はよく磨り減っていたのです。その上、野生の食料は植物にしても動物にしても、栽培植物や家畜に比して、比較的硬くて噛みづらいものです。

 また、歯は食べる為だけでなく、道具の発達していない時代では、しばしば前歯や犬歯は刃物の代わりとしても用いられ、すり減ったとも言われています。   

 約1万年前ごろから始まった農耕定住民の生活では、しだいに、調理器具や調味料(塩)も使われはじめ、それに伴って調理技術も発達し、食べ物はしだいに消化しやすい形に移行していきました(現代に比べればそれでもはるかに硬かったと思いますが)  

 それに伴って、農民は地域の差異にかかわらず、奥歯の切れ込みが深くなり、前歯や犬歯も鋭くなったことは、シリーズ1で書きました。

<いずれにせよ、歯の形から人類はもともと穀菜食であったと決めつけることはできません>



 さて、話を前回のシリーズ3の続きに戻します。農耕民が狩猟採集民より虫歯の発生が増えた事はすでに見てきたところです。  

 体の健康状態と、乳歯や永久歯の大きさとは密接な関係があることを、多くの考古学者たちが明らかにしています。乳歯や永久歯の形成期に栄養学的ストレスを受けると、歯の大きさが縮小するというものです。  

 ここでも、農耕民の方が狩猟採集民よりも歯の大きさが小さくなっていることが報告されています。


 栄養失調を経験すると、歯のエナメル質に形成不全(歯の周囲に現れる線や溝、ピット)が現れるそうで、これもまた農耕民に多く発生するようです。年齢的には、栄養失調に陥りやすい離乳期の2〜4才位と、成長期の11〜13才頃に出現のピークがあります。  

 

 平らなエナメル質の表面に線条的な溝や稜となって現れるキズのようなもので、ウィルソン帯と呼ばれています。これも狩猟採集民に比べ、農耕民のほうが4倍も高い頻度で増大が見られるそうです。特に、トウモロコシを主食にしていた先コロンブス期(1492年以前)のほとんどの調査で見られるそうです。

 


 古代人の骨から頭蓋骨に小さな穴があいたり(多孔性骨化過剰=ポロティック・ハイパーオストシス)、頭蓋骨が異常に拡大したり(クリブラ・オルビタリア)する変化が観察されています。これらの病変は、定住や農耕の開始以前ではほとんど観察されることはなく、農耕経済の確立後に多く現れています。



 何人かの研究者は、多くの堅果類(落花生やクルミなど)や、未精製穀類や豆類に含まれているフィチン酸によって鉄分の吸収が妨げられて鉄欠乏性貧血がひき起こされ、そのことが骨に異常を生じさせたと結論づけています。  

 しかし、北米大西洋岸南東部の先コロンブス期後期の人々は、部分的にトウモロコシに依存して、鉄分の吸収を減らす食事をしていたにもかかわらず、ポロティック・ハイパーオストシスへの罹患率が極端に低いのです。このことは、彼らがトウモロコシだけに依存することなく、海洋性資源(特に魚)を豊富に利用していたので、そのことが鉄分の吸収を高めていたと考えられています。



 ただ、骨に栄養失調の痕跡が認められたとしても、それを正しく診断することは、大変難しいものがあります。骨に現れる病変の栄養学的な原因としては、鉄欠乏症だけでなく、さらに、ビタミンD 欠乏症や、ビタミンC欠乏症、ヨウ素欠乏症、過度のフッ素欠乏症、たんぱく−カロリー欠乏症、微量元素の欠乏症など多岐にわたっているからです。



 しかし、何が原因であるにせよ、ここではっきり分かったことは、  

<古代人の歯や人骨研究の視点で見た、疾病や栄養との関係は、ほとんど例外なく、農耕民の健康レベルは、狩猟採集民より低下している>

 と、世界中の人類学者が認めていることです。

 


 ヨーロッパの場合、地域的に(地中海西部と、ヨーロッパ北部、および東部)差がないところもあるらしいのですが、サンプル数が不足しており、今ある資料からははっきりと結論づけられないそうです。


 人類学は今や多くの学問分野の人たちが、人類史のナゾを解くために参加するようになりました。例えば人骨に含まれる安定同位体分析によって、古代の人々が、どのような割合で陸上と海洋性の植物を摂っていたかというような事も分かるようになりました。頭髪の同位体分析も行われており、人骨(25〜30年スパン)よりも短い季節ごとの栄養摂取の違いも分析できるのだそうです。



 また、人骨のストロンチウムを調べる事によって、古代人の食性を調べる事もできます。一般的に、重金属や微量元素は、植物から草食動物へ、草食動物から肉食動物へと食物連鎖のレベルが上がるにつれて、生体濃縮されるのですが、ストロンチウムはその逆で、むしろ生体浄化(減衰)され、少なくなっていくのだそうです。

 なぜかと言うと、草食動物がストロンチウムを吸収した草を食べた場合、ストロンチウムは動物の骨の部分に蓄積され、肉の部分には蓄積されないからです。人間がその肉を食べたとしても、骨でも食べない限り、ストロンチウムが蓄積される事はないのだそうです。その為、人骨のストロンチウムを調べる事で、草食か肉食かを知る事ができるというわけです(ただし、いくつかの条件設定が必要です)



 これは、化石化した古代人のフンを分析することによって、当時の食性を知ろうという試みです。日本では、元帯広畜産大学の中野益男教授の研究によって飛躍的に進歩しました(シリーズ5で詳しく紹介)

 


また、面白いのは、人が食料を選択する基準は、最も豊富な体脂肪を持つ動物だったということです。トドを好んで食べた事や、バイソンのようなもっとも太った固体が選ばれたことなど、考古学的な遺体によって具体的に証明されているというのです。  


 また、人が家畜を飼うようになった理由の一つに、家畜は野生種よりも太っていて、より多くの脂肪を蓄えているからだという研究者もいます(イノシシとブタを比較して見てください。柔らかく消化し易くしたせいもあるかも知れません)  

 強制的にエサを食べさせて作ったアヒルの脂肪肝がフォアグラで、高級食材になっているというのも異常ではありますが、人類のコッテリ好きを証明しています。 

 健康志向の現代人は、肉を食べるなら出来るだけ脂肪を落として食べましょうという風潮があります。しかし、古代人は心臓病などなかったのに、現代人のほうが心臓病に悩まされています。なぜなのでしょうか。その考察はもっと後に譲る事にいたします。

 以上、世界的な視野で、古代人の食物と疾病の関係をたどってきましたが、次回は日本人の食物史を概観していきたいと思います。

 

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