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まほろばだより−まほろば主人から−
 

 

 
  23年前。
 アパートから西野6条2丁目の家屋つき店舗に移転しようとする数日前、配達帰りの私のバイクが、後方からの車に接触して横転した。

 その時は、何でもなかったが、足は怪我して腫れ上がり、思うように歩けなくなった。 しかも、それ以来、細菌が全身に回っているのかと思う位、微熱まで出てきて、中々体調が戻らなくなってしまった。  

 だが、それまで医者に行くという習慣がなかったので、小食にしたり絶食したりして、自然治癒力の回復に努めたが、どうやっても回復せず、開店日が迫り、気持ちは焦るばかりだった。


 
 その時、0−1テストをすると、魚肉が良いと反応する。
当時私は、ガチガチの菜食主義で、市場の魚介のセリ場に近付くだけで、気分が悪くなっていた。

 それに、玉葱などの臭い野菜さえ口にしていなかったので、食事の巾は極端に狭かった。

 到底、0−1テストとはいえ、私としては受け入れられる心情ではなかった。 しかし、体調は不思議なほど一向に回復せず、寝たきりでどうにもならない。  


 それでも、動物性食品は食べる気にはならなかった。

 家内は、妊娠した時、無性に鰻が食べたくなって遂に食べた。
 それまで同じ菜食主義だった妻を「汚らわしい」と思ったほど、信念で凝り固まっていたのだ。


 
 依然として0−1テストは、何よりも動物性食品が必要と出る。

 しかし、最後は0−1テストに従うしかないか・・・・・。まほろばは、0−1テストで選んだ食べ物を売る店である。店主が逆らうわけにはいかない。
 ついに最後は観念して、「かつを節ぐらいなら許せるか・・・・」と、自分に言い聞かせた。

 家内の作った、花かつをと紫蘇の葉を油で炒めて醤油で味付けしたものを、恐る恐るご飯に載せて思いっきり、口に移してみた。
それは、清水の舞台を飛び降りた・・・・・・つもりだった。  

 

 が、これが何と美味しくて美味しくて「世の中に、こんなに、旨いものがあったのか!」と言わんばかりに、茶碗に5、6杯立て続けに駆け込んだのだった。 家内が制止するのも聞かずに、おかわりをしてしまった。
 動物性食品は15年ほど食べていなかった。  

 不思議なことに、歩けなくなっていた足の腫れも、みるみる内に引き、体調はすこぶる回復し、2〜3日経った開店日には、めでたく仕入れにも行けるようになった。(仕入れだけして、帰ると店の二階で寝ていたが・・・)  

 店主が、記念すべき開店日に、奥で臥せっているというのも、お客様に申し訳ないことだったが、まほろばは、このようにして始まったのである。  
即、天然魚を仕入れ、良い肉を探し始めたのは、言うまでもない。



 0−1テストに向き合うと、常に価値観の転換を迫られる。
先入観や常識や思い込みを、悉く粉砕されてしまうのだ。  
しかし、まほろばは、何時でも、どんな所でも、0−1テスト通り行動して来た。  

 この開店時の私の恥ずかしいエピソードは、縁起が悪いように思える。
だが、その後のまほろばのあり方を決定付ける試金石であり、ターニングポイントだった。この価値観の大転換によって、今のまほろばには、魚あり肉あり、乳製品もありで、豊富な商品構成が出来上がった。
一般には当たり前のことなのだが。



 あの接触事故がなかったら・・・・・・・・  善悪の判断を超えることが、出来なかった。
むしろ開店時だからこそ、必要があって起こさせて戴いた象徴的な事件ではなかったか。

 改めて振り返った23年目の今、これは単なる笑い話や失敗談ではなかった。  

  何事も人間業ではなく、神の恩寵としか思えない自分が居た。



 今回上梓した「エリクサーから無限心へ(後篇)」に、その不思議満載を書き綴った。ことに、この3年間移転してからの不思議の連続は本になるくらいだ。  

 辻さんという編集者が「22を超えてゆけ」という本を書かれたが、そこにはある数理が人を支配していることが書かれてあった。
22の次は23である。
23はどの数でも割り切れない素数であり、神秘数でもある。


 今年23年目を迎え、元に戻る、素に戻る良い年回りを感じると共に、ここまで共に歩んで来られた多くのお客様とスタッフに感謝を込めて、また新たなる第一歩の歩を踏みしめたいと思います。  

 今日まで、かように応援して戴きました事、改めてお礼申し上げます。

 ありがとうございました。

 

 
 

 

 

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