私にとっての処女作でもあるこの本は、思いの丈を綴ったというより、日常の身辺に起った断片を、徒然に書き繋いだ随想集です。
何時か、本腰を入れて書きたいのですが、今は叶わず、それよりも小さい事象を捉えて、ことの在り様を述べるほうが気楽で、読者も短い詩文を味わって戴ければ、と思っております。
それが、「森下自然医学」の連載を依頼された時、自然食品を扱っているので、当然食について書くであろうとの編集部の思惑とは違う方向に走って、大変申し訳なく思っています。
しかし、健康雑誌に場違いな主題を連ねたことを、鷹揚にもよく許して戴けたことを感謝するものです。
最初、一年の約束だったのですが案外長く続き、去年の終わり頃、28回目で最終稿との連絡が入り、少しホッとしたのです。
しかし、数ヶ月してまた再開の依頼が入りました。これも不思議なのですが、森下会長は、全く打ち切りの指示はしていないという後日談、編集部でも謎の話なのです。
これも何かの為せる業なのでしょうか。
これがきっかけで、小泉武夫先生から上梓の勧めや出版社の紹介も手伝って、トントン拍子にことが運び、本が丁度良く発刊されたのですから。
初め講談社からの話しもあり、事は進んだのですが、こちらの思い通りにならないことが分かりました。
紹介されたIDP出版社では、全面こちらの意向を受け入れてくれる編集方針だったのです。
そこの和泉代表が、「こんな書籍は初めて」と、言われるほど、出版界常識とはかけ離れた本の作りになっています。
先ず、「宋朝体」という書体を使いました。
この件の詳しい話は、来月号の「森下自然医学」誌に発表されます。 40年の講談社での編集業で一度も出会ったことがなく、60年の老舗、藤原印刷でも本文での採用は皆無で、とにかく、氏曰く、「出版業界初!」とのことでした。
一般的に普及している明朝体より、ずっと古典的な書体なのです。
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