先日、興農ファーム代表の本田廣一さんから、
「うちの肉がどうしてアトピーやアレルギーが出ないのか、
文章にしてもらえないか」と言う依頼を受けました。
考えてみれば簡単なことです。
それは、抗生物質や合成抗菌薬剤など、何も使わなくても、
どんな豚よりも自然に健康に育っているからです。
つまり、生命力が強いのです。
何故、生命力が強いかと言うと、
本田さんの豚さんや、牛さんに対する愛情がハンパでないからです。
それは、単なるかわいいと言うオセンチではなく、必要とあらば、我が子を谷底にでも突き落とすという類の確固とした生命哲学に基づいた愛なのです。
そこから、家畜の生理を徹底的に研究されて、その生理に合った飼育をされているのです。
私もまほろば農園で本物を求めて悪戦苦闘しているので、
本田さんの想いは以心伝心です。
しかし、厳しさが違います。
走れども走れども何もない北海道の東の果て、
厳寒1月に訪れた標津は、私の想像を絶する寒さと孤独感、寂寥感がありました。
スキ間だらけの豚舎の中で、彼の愛すべき豚君たちは、干し草と糞で作られた発酵堆肥の上に、ハイジのベッドのようにきれいな干し草を大量に敷き詰めてもらい、堆肥の発酵熱で底冷えを防いでいました。
この永続可能な循環自然エネルギーのゼロ経費発酵熱は、床温が20度もあるとか、本当に驚きです。
その50m位の広い豚舎(一頭あたり、近代養豚の10倍くらい)の端から端までを、本田さんが行って呼びかけると、数十匹の豚が、集団で地響きを立てて我先にと猛烈なスピードで駆け寄ってくるのです(豚は、犬と同じ位の知能と感情があるそうです)。
・・・まほろば社長ブログ(2012年2月4日付)で動画が見れます!
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健康な豚は皆きれいで精悍な顔をしています。
狭い豚舎の中で濃厚飼料を〈食っちゃ寝〉しているメタボ豚とは違います。
興農ファームでは、牛は一年中、野外で放牧(普通は冬は牛舎)して吹雪でも牧舎に帰れません。
その時は、集団で林の樹の下に集まって厳寒を耐えるのです。
子牛は、吹き抜けの小屋の中にいました。
それと言うのも、普通は牛舎というのは、外気を遮断した建物の真ん中に通路があり、牛は通路側からエサをもらうようになっているのですが、興農ファームでは、吹き抜けの野外からエサをもらうような構造になっているからです。
将来的に、冬でも野外で暮らせる様に厳しく育てられているのでしょう。
または、建物の内側に仕切りのない運動スペースを広く取る為ではないかと思いました。
それから、通常、子牛は、病原菌が伝染するといけないので、
一頭ずつ仕切りのある部屋に入れて飼うそうですが、
興農ファームでは仕切りがありません。
子牛の時に社会性を養うことが大切だとの事。
うーん……社会性まで考えられているとは……お金に換算できない形のない価値も大切にされているのでした。
ケージ飼いの鶏も社会性は育たないだろうし、その卵や肉を食べた人間の社会性はどうなるのだろうか?
エサも全部自家配合飼料で、集めた材料をヌカと共にバランスよく配合して混ぜ合わせ、それを一定期間発酵させて与えているのです。
その飼料を見たとき、私は「コレだ!!」と思いました。
発酵によって、栄養素はある程度のところまで分解され、有用微生物のエサになったり、豚の体内で代謝しやすい形になっていきます。
発酵飼料を食べた豚の腸内は、菌叢バランスが整えられ、有用微生物が増殖して、健康的な腸内になります。
そして、発酵によって、半消化された栄養素は、腸内の健康な微生物でさらに消化され、素早く腸壁から取り込まれやすくなり、豚はグングン成長していくことが出来るのです。
近代養豚の豚舎のようなイヤな臭いもありません。
豚クンの腸が健康な証拠です。
化学薬剤が要らないわけです。
一般の濃厚飼料の中に、早く太らせる為に少しずつ添加されている抗生物質や合成抗菌剤は、良い菌も悪い菌も無差別攻撃して殺してしまうのですが、発酵飼料は、バランスよく増殖させてくれます。
さらに飼料設計は、綿密な豚生理学と栄養学の研究の上に成長段階に合わせて、組み立てられています。
近代養豚では、生後15日位で早期離乳し、豚用粉ミルク(牛乳由来)を与えます。
なぜかと言うと、いつまでも母乳を飲ませていると、母豚は発情しないので、出産の回転率をあげる為に早く離乳するのだそうです。
早期離乳すると、免疫を十分獲得できないので、病気に罹りやすくなり、抗生物質も必要な生命力の弱い豚になってしまいます。
このように、抗生物質は医薬品としてばかりでなく、成長促進剤としても使われていますが、これらが、人体に耐性菌を増やし、抗生物質の効かない人体を作り上げていることも大きな社会問題になっています。
家畜用粉ミルクには、抗生物質を入れるか、着色することが法的に義務付けられているそうです。
興農ファームでは、免疫を十分獲得できる28日から30日まで母乳を与えます。家畜用粉ミルクを使わなくても離乳出来るところまで母乳で育てます。
離乳食はチーズ(規格外品)と前述の植物性発酵飼料で、徐々にチーズ(動物性)を減らし、植物性飼料に替えていきます。
母乳は動物性なので、いきなり植物性だけに出来ないからです。
30日から60日くらいで、植物性飼料だけにして行きます。
30日から90日くらいまでは、内臓や骨格を作る時期なので、カルシウムを入れてあげ、しっかり運動させてあげると、内臓も骨格も出来、筋肉もついて締まった肉になるそうです。
6ヶ月頃からじゃがいも等、でんぷん質を多めにして運動させると、締まった白い脂がつくそうです。
そのようにして育った豚は、2次性徴までして十分大人になってから、210日から240日(7〜8ヶ月)で出荷されますが、それは、人間で言うと、〈娘18、番茶も出花〉と言う時期だとの事、それ以上置くと、悪い脂肪がついたりして老化豚になっていくそうです。
近代養豚では、まだ十分に大人になっていない5ヶ月から5・5ヶ月くらいで出荷するそうです。
これも回転率を上げる為で、とうもろこしや大豆、魚カスなどの濃厚飼料をたっぷりあげて運動させないので、形だけは大きいけれど、栄養過多で内臓障害を起こした(65〜70%が一部廃棄、又は全廃棄)脂肪たっぷりのメタボ豚が出来上がるわけです。
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とうもろこしや大豆は高栄養と言うことばかりでなく、それらはリノール酸が多く、炎症や、動脈硬化を起こしやすく、病気の引き金になってしまいます。
リノール酸の多い植物油を取りすぎた現代人にとって決して良いはずはありません。
本田さんによると、魚カスは、昔は白身の魚が原材料になっていたのですが、今はイカのゴロが主体になっているそうです。
イカのゴロ(内臓)は有害物質が多く、特にダイオキシンや重金属類が集積しています(重金属分析表より)
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肉を食べると、アレルギーが悪化するのは無理もありません。
農園でも、魚カスや大豆カスは0‐1テストすると良くないので使っていませんが、なるほどと納得です。
一方、興農ファームでは、とうもろこしや魚カスは使わず、クズ小麦、クズ豆(金時豆、ウズラ豆など)、少量のクズ大豆、ビートパルプ、モミガラつきの米、ふすま、ヌカ、ジャガイモ、チーズ等を使っているそうです。
リノール酸の多いとうもろこしや、大豆は、畜産飼料として一般的ですが、早くからそれらを使わないと言うのは(大豆は少量だけ)、生半可な知識や経験だけで分かることではありません。
リノール酸の取り過ぎが、あらゆる病気の引き金になっていると言うことは、まだ、それほど一般に知れ渡っていることではないからです。
本田さんの牛や豚は、単なる自家配合豚や自家配合牛ではないのです。最新の分子栄養学や、脂質栄養学、運動栄養学等に基づいた自家配合飼料だったのです。
豚さんに病気が出ない筈ですし、それを食べた人も健康になれる筈なのです。
豚肉にはオレイン酸が少し多すぎるのですが、野菜、果物、海草などにはほとんどオレイン酸がないので、食全体としてはバランスが取れるようになっています。
植物性のタンパク源として大豆が推奨されていますが、現代人の体質を悪化させているリノール酸と炭水化物が多いので、摂れば摂るほどリノール酸過多、炭水化物過多を助長してしまいます。
春になると、とてつもなく広い牧場に放牧され(牛は一年中外)、シーズン中は100パーセント自由行動で、自家配合飼料も自由に食べられるように用意しておくそうですが、
それほど良い飼料でも、青草が生え始めた頃は、
夢中になって草ばかり食べて、
3日間くらい帰って来ないそうです。
人智は大自然の恩恵の中にありです。
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