今まで、"糖"と言えば、栄養学的に言うと、主としてエネルギー源として考えられてきました。体温を保持したり、筋肉や、脳の活動エネルギー源として、また、体内の生合成エネルギーとして、いうなれば、車のガソリンのようなものだったわけです。
ところが近年、生命科学の発達にともない、そればかりでなく、糖もたんぱく質や脂質と同じように、体の構成要素となって、機能的役割を果たしているという事が分かって来たのです。糖鎖は、細胞膜を構成するたんぱく質や、脂質の先にくっついて、細胞の表面に、複雑な形をしてアンテナの様にのび、細胞と細胞の間の情報の認識や伝達の働きをしていたのです。
また、そのたんぱく質や、脂質の機能や方向を決定したり、強化したり、安定させたりもしているのです。
これは "糖鎖"と言われ、別名 "細胞の顔"とも言われています。バーコードと言われる事もあります。(主婦にはそれの方が分かりやすいですよね)
たとえば、血液型の決定なども、赤血球にくっつく糖鎖の種類の違いによって、A型になったり、B型になったりすると言うのですから、難しそうだけど、けっこう身近な話ではあるのです。
感染症(インフルエンザ、コレラ、O-157等)やガンも、病原体や毒素が特定の糖鎖にくっついて、はじめて病原性を発揮する事ができるらしいのです。現在では、糖鎖に関係する病気は100種類以上あると言われています。
そんな中で今回は、今流行中のインフルエンザを取り上げて見たいと思います。人間のどんな糖鎖にインフルエンザ・ウイルスはくっついて、細胞内に侵入して来るのでしょうか?(糖鎖は、状況の変化によって、良くも悪くも働く"諸刃のヤイバ"のようです)
糖鎖を構成する糖には、以下のように、8つの基本的な単糖類(糖を構成する最小単位)があります。(グルコース、ガラクトース、フコース、マンノース、キシロース、N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルノイラミン酸)
これらの糖が複雑に組み合わさって、糖鎖が出来るのですが、この中のN-アセチルノイラミン酸(難しくて長すぎるので、以後アセチル酸とします)は、糖鎖の末端にくっつく事が多く、その機能性が注目されています。
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